脂肪腫とは|原因や治療法、似た疾患との見分け方
「体にしこりがある」「押すと柔らかいできものがある」
このような場合、脂肪腫(しぼうしゅ)の可能性があります。
脂肪腫は比較的よくみられる良性腫瘍ですが、見た目が似ている粉瘤(アテローム)や悪性腫瘍との区別が重要です。
本記事では、脂肪腫について
原因・症状・診断・手術・費用・注意すべき悪性の可能性まで、皮膚科専門医の視点からわかりやすく解説します。
脂肪腫とは|皮膚の下にできる良性腫瘍

脂肪腫とは、皮下に脂肪細胞が増殖してできる良性腫瘍です。
全身どこにでも発生しますが、特に以下に多くみられます。
- 首・肩・背中
- 腕・太もも
- お腹・腰まわり
触るとやわらかく、よく動くようなしこりとして感じられるのが特徴です。
脂肪腫の原因|なぜできるのか?

脂肪腫の明確な原因は完全には解明されていませんが、以下が関与すると考えられています。
- 遺伝的要因
- 外傷(ぶつけた後に発生することがある)
- 肥満や代謝異常(糖尿病・脂質異常症など)
ぶつけるなどの外傷により炎症が起こり、脂肪細胞に異常が起こり増え脂肪腫になると考えられています。また肥満の方では大きくなりやすい傾向がありますが、やせている方にも発生します。
脂肪腫は痛い?症状の特徴
基本的に脂肪腫は無痛性です。
ただし以下の場合は痛みが出ることがあります。
- 神経を圧迫している場合
- 急激に大きくなった場合
- 血管脂肪腫の場合
血管脂肪腫は痛みを伴うことがあり、また体に複数できることがあります。見た目は脂肪腫と似ています。
「痛みがある=脂肪腫ではない」とは限らないため注意が必要です。
脂肪腫は何科?どこを受診すべきか
脂肪腫が疑われる場合は、皮膚科の受診が基本です。
特に以下の場合は早めの受診が重要です。
- 急に大きくなっている
- 固くて動かない
- 痛みが強い
- 5cm以上ある
脂肪腫と粉瘤・稗粒腫の違い
見た目が似ているため、よく間違われる疾患との違いを理解することが重要です。

■ 粉瘤(アテローム)
- 中に角質と皮脂がたまる袋状構造
- 中央に黒い点(開口部)
- 臭いにおいがある
- 炎症を起こすと痛くなる
粉瘤の詳しい症状や治療については、こちら粉瘤のページで詳しく解説しています。
■ 稗粒腫
- 小さな白い粒(1〜2mm)
- 主に目周りなど顔にできる
- 皮膚の浅いところにある
■ 脂肪腫
- 柔らかく、よく動く
- 深い位置にある
- ゆっくりと大きくなる(10cm以上になることも)
顔にもできる?脂肪腫の好発部位
脂肪腫は顔にも発生することがありますが、体幹や四肢に比べると頻度はやや低めです。
顔にできる場合はおでこにできることが多く、筋膜下という深い層にできることが多くなります。
顔の場合は
- 見た目の問題
- 神経、血管への影響
を考慮して治療判断が重要になります。
脂肪腫の診断
脂肪腫の診断は触診が基本です。
腫瘍の大きさや深さ、性状によっては、エコー(超音波)検査やMRI検査が必要になる場合があります。
※当院では画像検査(エコー・MRI)は行っていないため、必要に応じて総合病院へご紹介いたします。
脂肪腫は悪性になる?注意すべきポイント
脂肪腫自体は基本的に良性で、癌化することはほぼありません。
しかし、以下の場合は注意が必要です。
- 急速に増大する
- 硬い・動かない
- 深部にある
- サイズが大きい(5cm以上)
この場合は脂肪肉腫(悪性腫瘍)の可能性を考え、大きい病院でのMRI検査やエコー検査など精密検査が必要です。
脂肪腫の治療|手術での摘出が基本

脂肪腫の治療は外科的切除(手術)が基本です。
薬や塗り薬で治すことはできません。
手術は通常
- 局所麻酔
- 日帰り手術
で行われます。
5cm以上の大きいものや、筋肉の下にある深い脂肪腫(筋層内脂肪腫など)、背中など皮膚の厚い場所にあるものは入院の上手術を行うこともあります。
脂肪腫の手術の流れ
- 局所麻酔
- 皮膚を切開
- 腫瘍を摘出
- 縫合
脂肪腫は被膜をもつため、完全に取り切ることが可能です。
当院では、できるだけ傷を小さくするためにスクイーズ法を採用しています。
小切開から腫瘍を摘出することで、傷を最小限に抑え、日常生活への影響を軽減します。
当院で行っている手術法、対象の症状、治療症例については日帰り手術のページをご覧ください。
脂肪腫の手術費用(保険適用)
脂肪腫の手術は基本的に保険適用です。
目安(3割負担)
| 小さいもの(3cm以下程度) | 約6,000円〜9,000円前後 |
|---|---|
| 中等度(6cm以下程度) | 約10,000円〜15,000円前後 |
| 大きいもの | 約20,000円〜30,000円以上 |
※部位・大きさで変動します
脂肪腫は放置してもいい?
脂肪腫は良性のため、必ずしも治療は必要ありません。
ただし以下の場合は手術が推奨されます。
- 大きくなっている
- 見た目が気になる
- 痛みや違和感がある
- 悪性との区別が必要
よくある質問
- 脂肪腫は放置しても大丈夫ですか?
-
脂肪腫は良性腫瘍のため、必ずしも治療は必要ありません。ただし徐々に大きくなることがあり、見た目や違和感がある場合、また悪性との区別が必要な場合は手術を検討します。
- 脂肪腫は自然に治りますか?
-
脂肪腫が自然に消えることは基本的にありません。小さいまま変化しないこともありますが、多くの場合ゆっくり大きくなっていきます。完全に治すには手術による摘出が必要です。
- 脂肪腫は何科を受診すればいいですか?
-
脂肪腫は皮膚科で診断可能です。状態によっては外科的治療(手術)まで対応できるため、まずは皮膚科の受診をおすすめします。
- 脂肪腫と粉瘤はどう見分けますか?
-
脂肪腫は柔らかくよく動くのが特徴です。一方、粉瘤は中央に黒い点があり、炎症を起こして腫れることがあります。見た目だけでの判断は難しいため、診察が必要です。
- 脂肪腫は痛くなることがありますか?
-
基本的には無痛ですが、神経を圧迫した場合や血管脂肪腫では痛みが出ることがあります。
- 脂肪腫が大きい場合は危険ですか?
-
大きいだけで必ずしも危険ではありませんが、5cm以上の場合や急速に大きくなる場合は悪性腫瘍である脂肪肉腫との鑑別が必要です。
- 脂肪腫の手術は痛いですか?
-
局所麻酔で行うため手術中の痛みはほとんどありません。術後に軽い痛みや違和感が出ることはありますが、日常生活に大きな支障は少ないことが一般的です。
まとめ|脂肪腫は正確な診断と適切なタイミングが重要
脂肪腫はよくある良性腫瘍ですが、
- 粉瘤との違い
- 悪性腫瘍との鑑別
- 手術のタイミング
が重要です。
特に「しこり」は自己判断が難しいため、気になる場合は早めに皮膚科での診察をおすすめします。
当院では日帰りでの手術にも対応しております(※症状によるためご相談ください)。
【参考文献】
- NCBI StatPearls Lipoma
- 日本皮膚科学会Q&A アテローム(粉瘤)と脂肪腫の違い
- Natella R, Varriano G, Brunese MC, Zappia M, Bruno M, Gallo M, Fazioli F, Simonetti I, Granata V, Brunese L, Santone A. Increasing differential diagnosis between lipoma and liposarcoma through radiomics: a narrative review. Explor Target Antitumor Ther. 2023;4(3):498-510. PMID: 37455823.
記事制作監修
院長 上條 広章(かみじょう ひろあき)
資格
- 東京大学医学部卒業
- 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 医学博士(東京大学大学院医学系研究科)など
所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会 など
※詳しくは医師紹介のページをご覧ください。